クリスマス・キャロルを観に行った

クリスマス・キャロルを観に行った

日記

クリスマス・キャロル,劇団昴,宮本充,観劇,高円寺

2023年12月4日

12/3 に劇団昴公演の「クリスマス・キャロル」を観に行った。 自分の意志で初めて行った劇だったけど超良かった。

最初に断っておくと、具体的なストーリーについては劇に譲っておく。 劇団昴では毎年このシーズンになるとマイナーチェンジしながら公演するらしいので、ぜひ足を運ぶことをおすすめする。

経緯

そもそも観に行った理由としては、9 月に僕自身が奇妙な縁で劇に出た機会があって、短い公演期間に全力を注ぐ人たちの存在を知った。 その時に知り合った矢崎さんが「近々クリスマス・キャロルに出演するよ!」って言ってくれたのだ。 次の機会は是非観劇をしてみたいな、と思っていたところだったので、意気揚々と友人を誘って行くことにした。

しかし思えば、最後にした観劇といえば中学生のときに劇団四季の Oz だったかを観に行ったくらいで、役者が見えないわ、話もよくわからんわ、育ち盛りだわで正直大爆睡した記憶しかないので、ぶっちゃけ割りと負い目を抱きながら、舞台のある座・高円寺まで足を運んだ。

感想やら

なんて、心暖まるいい話なんだろうってジーンとした。 友人も同じだったようで、「これだけで今日はいい日だった」と言い合った。

偏屈で周囲に冷たい視線を向けていた主人公が精霊とともに自分の人生を俯瞰することで改心していく、というよくある展開といえばそうなのかもしれないけど、ところどころ見せてくれた人間臭さが物語であるということを忘れさせてくれて、本当にある話のように没頭することができた。 あと単純に、わかりやすい話ってのは観劇初心者の僕たちにとってピッタリの題材でもあった(矢崎さん曰く、子供向けとのこと)。

行き交う人に「メリークリスマス!」とありったけの祝福をし合うシーンから始まり、こんなクリスマスだったらどんなに素敵なんだろう、って開幕から涙腺から込み上げてくるものがあった(早い)。 正直心底羨ましい、と思ってしまった。

超ハートフルで素敵な話なんだけど、個人的に特にお気に入りのシーンとして 3 つ述べよう。

社交ダンスに興じるシーン

仕事を午前中で切り上げて、みんなで質素な飾り付けをして、民謡に合わせて社交ダンスをして、一緒に美味しい料理を食べて、若かりし主人公が恋に落ちちゃったりして、劇中での「幸だな~」のピークに当たるシーン。 だってクリスマスだから!って言って、自分の幸せに対して真摯に向き合っていて良かった。 等身大の幸せが結局一番幸せだよね。

民謡のチョイスも社交ダンスもすごく本格的で、そのシーンだけでもまるでショーを見ているみたいだった。 アイルランド民謡をやってる身としてはこんなところで触れることになるとは思わず嬉しかった。

ちょっと余談だけど、日々のセッション然り、ケーリーダンス然り、そして今日の劇然り。 僕にとってケルト(アイルランド民謡)はゲームやファンタジーやショーの話ではなく、あくまで生活や人々との交流と共にある、身近なものとして捉えてるんだなーと再認識もしましたね。

偏屈な主人公に対しても皆が祝福するシーン

主人公は「メリークリスマス!」と言われても見向きもしないし、日頃からも皆に対して冷たく当たっているが、そんな主人公の元で働いて一番嫌味を言われる人が、主人公のいないクリスマスパーティで「スクルージさん(主人公)を祝福して乾杯」と言うシーン。 「どうしてあの人なんか祝福するんだ」と周りの人は言うけれど、職をくれ、給料を頂けて恩を感じているというのだ。

この物語の登場人物はこのシーンに限らず皆素直で大らかで優しい。 人のいい部分をちゃんと素直に認めるって当たり前だけど大事なことだよね。

主人公がゲームに参加しようとするシーン

主人公が精霊と近い将来を覗き見している際のシーン。 主人公のいないところでみんなが楽しそうにクイズをしているのだが、当人たちには見えも聞こえもしないのを知っているはずなのについつい主人公もそのクイズに参加してしまう。

このシーンがなんでお気に入りかというと、主人公の元来持っている愛嬌が存分に見られるシーンだからだ。 この物語ではあくまで「偏屈な主人公が改心した」という表現がされるのだけど、個人的にはそう思わなかった。 なぜならストーリーを見ていると、偏屈な描写がされるシーンでも一貫して主人公はユーモラスで愉快さがあるし、忠告を素直に受け止める懐を持っていた。 回想のシーンではピュアで愛らしさすらあって、運悪く周囲の環境のせいで、自分の心身を護ろうとするあまりついつい頑固で塞ぎ込んでしまっただけなのだと感じた。 だからこそ、最後に改心してみんなに受け入れられるシーンがより一層嬉しく感じられた。

もしかしたら、こうして別人のようなった主人公を皆が素直に受け入れたのは、主人公が元来持っていた愛嬌をなんとなく知っていたからなのかもしれない、というのは考え過ぎかしら。

紹介


『クリスマス・キャロル』

原作=チャールズ・ディケンズ
脚色=ジョン・モーティマー
訳=石川麻衣
台本・演出=菊池准(演劇企画 JOKO)

出演
宮本充 伊藤和晃 牛山茂 林佳代子 米倉紀之子 山口研志 市川奈央子 田徳真尚 三輪学 江﨑泰介 舞山裕子 加賀谷崇文 矢﨑和哉 笹井達規 新藤真耶 洲本大輔 上林未菜美 竹原優支(児童劇団「大きな夢」)

12 月2日(土)~ 10 日(日)

会場=座・高円寺1

お問合せ=劇団昴  03-6907-9220


クリスマスキャロルのパンフレット